脳梗塞の再発リスクが最小になるHbA1cは何パーセント?

最近寒くなったよね~
でも、犬小屋にホットカーペット入れてもらったからサイコーだよ!
モッさん
モッさん
先生の家はなんとなく寒そうだね~かわいそうw
モッさん
モッさん
Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
(マウンティング?)

脳卒中の再発を抑えるHbA1cは?~中国のレジストリ研究より~

さて、ホットカーペットとはなんの関係もありませんが、本日は脳卒中発症後の血管イベントの再発とHbA1cとの関係についての話題です。

糖尿病患者さんが脳卒中を起こしやすいことは広く知られていますが、一度脳卒中を起こした後の再発を抑えるためには、どの程度の血糖コントロールを目指せばよいか悩むところですよね、、

このヒントとなる論文がありましたのでご紹介したいと思います。

Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
まずはモッさんに質問です。糖尿病患者さんの細小血管合併症(網膜症、腎症、神経障害など)の発症や進行を抑えるために、まずはHbA1c7%未満を目指すべきだとされていますが、
Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
脳卒中や心筋梗塞の発症を抑えるためには、HbA1cはどこまで下げるべきでしょうか?
低血糖がよくないというのは聞いたことがあるけど、、HbA1cはよくわからないなあ、、
モッさん
モッさん
Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
モッさんにしてはまずまずの回答ですね。
モッさんの言う通り、どこまでHbA1cを下げるべきかわかっていませんが、低血糖はそのリスクを上げることは知られています。

HbA1c≧7%もしくは空腹時血糖≧130mg/dLでは脳卒中の再発リスクが上昇した。

今回ご紹介するのは、虚血性脳卒中を発症した患者さんのHbA1cと1年以内の血管イベントの再発率との関係を調べた論文です。

一見よくありそうな論文なのですが、この研究の興味深いところは、1年以内に発症した血管イベントのうち、虚血性脳卒中をアテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞、心原性脳塞栓のサブタイプに分けて、各サブタイプの発症率と血糖コントロールとの関連を調べていることですね。

 

中国の脳卒中データベースを用いて行われたレジストリ研究です。

まず、TIA(一過性脳虚血発作)もしくは虚血性脳梗塞を発症してから7日以内に、データベースに登録された18567人が対象となりました。

この対象者を1年間追跡して、入院時(初回の虚血性脳卒中発症時)のHbA1cと、1年以内の複合血管イベントの発症率との関連が調べられました。

※複合血管イベントには、心筋梗塞、虚血性脳卒中(アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞、心原性脳塞栓症)、その他の血管イベントが含まれているとのことです。

まる
まる
結果だね♪

 

初回入院時の平均年齢は70歳、平均HbA1cは7.5%でした。

対象者のうち1年以内に1437人(8%)が複合心血管イベントを発症し、954人(5%)が虚血性脳卒中を発症しました。

結構多くの人が1年以内にイベントを発症している…
モッさん
モッさん

 

まず、HbA1cが7%以上の人は6.5%未満の人と比べて、複合血管イベントや虚血性脳卒中再発のリスクが約1.3倍増加していました。(※年齢や既往歴、血圧や脂質などのデータ、喫煙の有無などの因子を調整後)

 

Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
ただし、
Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
興味深いことにHbA1c7.0%未満でも、空腹時血糖値が130mg/dL以上の人ではイベント発症リスクが高い結果でした。

アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞、心原性脳塞栓症の発症リスクが最小となるHbA1cは異なる結果であった。

Fractional Polynomial(FP)モデルと線形二次線量反応(Linear-quadratic:LQ)モデルを用いて、脳梗塞の各サブタイプ(アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞、心原性脳塞栓症)の再発リスクが最低になるHbA1cが調べられました。

FPL
モッさん
モッさん
Q?
まる
まる
Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
いくつかの手法で解析しているのでしょうね。すみませんが手法についての詳細は私にもわかりません…
仕方ないよ。先生の犬小屋は寒いし。
モッさん
モッさん

 

まず、FPモデル解析(下図)では、アテローム血栓性脳梗塞の発症リスクが最低になるHbA1cは7.3%(95%CI:6.8-7.9)でしたが、

 

 

ラクナ梗塞の発症リスクが最低になるHbA1cは6.6%(95%CI:6.3-6.9)であり、

 

 

心原性脳塞栓症の発症リスクが最低になるHbA1cは7.4%(95%CI:6.3-8.5)でした。しかも下図をみると、心原性脳梗塞についてはHbA1cが上昇しても発症リスクはそれほど上がらない印象ですね。

 

ちなみに、LQモデルを用いた解析では、ラクナ梗塞とアテローム血栓性脳梗塞では上記のFPモデル解析と非常に似た結果が得られましたが、心原性脳塞栓症のリスクが最小となるHbA1cは8.0% (95%CI:5.1–10.8)であり、さらに高めの結果でした

リスクが最小になるHbA1cがそれぞれ違うね。
というか、ラクナ梗塞ってなに?
モッさん
モッさん
Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
そうですね。
同じ脳梗塞でもタイプによって、発症リスクが最小になるHbA1cが異なるのですね

 

ちなみにラクナ梗塞とは小さな脳梗塞(深部の細い血管が詰まる梗塞)のことです。細い血管が詰まるので、太い血管が詰まるアテローム血栓性脳梗塞に比べて麻痺などの症状が出にくく気付かれにくい特徴があります。

ただし、無症状なので大丈夫ということではありません。梗塞巣が多発することも多く、だんだんと症状が進行したり認知症が進んだりします

このラクナ梗塞の発症リスクを十分に下げるためには、HbA1cを6~6.5%程度まで下げるのが理想ということですね。

ちなみに心原性脳塞栓症は、他の2つのサブタイプと比べてHbA1c上昇によるリスク上昇が少ない結果でした。発症リスクが最低となるHbA1cも高めです。

これは、HbA1cよりもむしろ低血糖が心原性脳塞栓症の発症に強く影響するからではないかと推測されています。心房細動のある方は要注意です。

 

Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
低血糖なくHbA1cを低下させる治療がポイントですね。難しいですね~

 

(※ちなみに、この研究でデータとして使用されたHbA1cは初回入院時のHbA1cであって、その後1年間の血糖コントロール状況をあらわしているものではないことに注意が必要です。)

 

まとめると、脳梗塞の再発を防ぐためには、まずはHbA1c7%未満を目指し、低血糖リスクの低い治療法であればHbA1cをさらに下げる(6.5%あたりまで)のが理想ということですね。

また、心原性脳梗塞の既往のある人や心房細動がある人など、心原性脳梗塞のリスクが高い人では、特に低血糖に注意が必要ですね。

……………………………………………………………………………………………………………….

Association of Prestroke Glycemic Control With Vascular Events During 1-Year Follow-up. Chang JY, Kim WJ, Kwon JH, Lee JS, Kim BJ, Kim JT, Lee J, Cha JK, Kim DH, Cho YJ, Hong KS, Lee SJ, Park JM, Lee BC, Oh MS, Lee SH, Kim C, Kim DE, Lee KB, Park TH, Choi JC, Shin DI, Sohn SI, Hong JH, Bae HJ, Han MK. Neurology. 97(17):e1717-e1726 ,2021. doi: 10.1212/WNL.0000000000012729. Epub 2021 Sep 29