子供の時に1型糖尿病を発症することで、血糖の自己管理をしなければならなくなるだけでなく、学業成績などに悪影響が出てしまうのではないかと心配になる場合もあると思います。
イギリスで1型糖尿病を持つ小児における学業成績や通学の状況を調べた報告がありました。
この研究では2009年から2016年にウェールズ地方の学校に通っていた6~16歳の1型糖尿病の生徒1212人と非糖尿病の生徒26万3426人が対象となりました。(イギリスの義務教育は,5~16歳の11年間だそうです)
1型糖尿病を持つ生徒はHbA1c値により5群に分けられ、各群の1型糖尿病生徒、非糖尿病生徒において、High-stakes testing(進級テストなどの重要な試験)における成績、大学進学率、年間欠席数が比較されました。

0のラインの赤い点線が非糖尿病生徒であり、青いドットが各群の1型糖尿病の生徒です。
上にドットがあるほど成績が良いことを示しています。
全体では1型糖尿病と非糖尿病生徒の成績に差はなく、HbA1cが5.0~7.9%の生徒は非糖尿病の生徒に比べて有意に良好な成績でした。
一方、HbA1cが10.1-14%の生徒では非糖尿病の生徒に比べて成績が悪かったという結果でした。
こちらも全体では1型糖尿病と非糖尿病生徒の進学率に差はなく、HbA1cが5.0~7.9%の生徒では非糖尿病の生徒に比べて有意に進学率が高い結果でしたが、一方でHbA1cが10.1-14%の生徒では進学率が低いという結果でした。


なお、年間欠席数(授業1セッションは半日と計算されています)については1型糖尿病の生徒全体では欠席数がやや多く、特にHbA1c10.1%以上の生徒では欠席数が結構多くなっていました。
HbA1c9.1%までの群では、非糖尿病の生徒と比較して年間6-7回多く欠席している程度でした。

ただし、血糖管理がなかなかうまくいかない生徒は欠席数や学業成績も低い傾向がありました。
これは、「成績が悪い生徒では血糖値が高い」、もしくは「血糖値が高いと勉強ができなくなる」ということではなく、なんらかの理由(気持ちの問題や周りの状況など)で糖尿病治療や勉強などに前向きに取り組めず本人が苦しんでいるということをあらわしているのだと思います。
特に周りのサポートが必要な子どもたちだと思います。
小さいころから食事やおやつのたびにインスリンを打ち、血糖値を気にしながら生活するのは本当に大変なことだと思います。
糖尿病の合併症により彼ら彼女らの将来の可能性が狭められないように、私たち医療者はできる限りサポートしていかないといけません。