

超・超速効型インスリンであるルムジェブを使っているポンプユーザーがかなり増えてきています。
一方、変更を考えている方にとっては、安全に使えるのかな?という不安があると思います。
当院でも多くの患者さんで超速効型からルムジェブなどの超・超速効型インスリンへの変更を行っていますが、そのメリット、デメリットについて改めて考えてみます。


超・超速効型インスリンが適する患者さんは?
食後血糖の上がりが早い
一般的には若い人(胃腸運動がよい!)では食後の血糖が急峻に上がる場合が多いです。この血糖上昇の速さに負けないインスリンがあればよいですよね。
バタバタしていて急いで食べちゃう!
もともと食べるのが早い人もいると思いますし、仕事や用事などに追われて慌てて食べちゃう!という人もいると思います。



ボーラスタイミングがいつも直前になってしまう
ペン型インスリン治療でもインスリンポンプ治療でも、超速効型インスリンは食直前に投与すべきとされています。
しかし実際には、食事の内容やその人の血糖上昇パターンを見ながら、食前5分、10分など、その人に最も合ったタイミングを探していくことになります。
しかし忙しくて、またはタイミングを逸してしまって、いつも食直前にしか投与できない(!)、そのためインスリンが追い付かず急激に食後血糖が上がってしまうという患者さんにも、超・超速効型が適するかもしれません。
次の食事前に低血糖になってしまう
ボーラスしたインスリンの作用がどうしても残ってしまうのが一因となります。このような場合も、効果発現が早く、切れの良いインスリンが効果的ですね。
まめに補正インスリンを入れている
インスリンが早く効きはじめて早く切れるので、補正インスリンを投与しやすいというメリットがあります。
炭水化物がメインの食事が多い
食の好みや、いつも利用している(社食など)レストランのメニューなどの問題で、どうしても炭水化物に偏った食事になりがちな場合は、やはり食後血糖が急峻に上がってしまいますね…
超・超速効型インスリンが適さない患者さんは?
胃運動の低下がある
これは自身ではなかなかわかりませんが、糖尿病を発症してからの期間が長い人や、胃もたれなどがよく起こる人では、胃運動が低下している場合があります。
食後ゆっくりと(ダラダラと)血糖が上がる・食後すぐに血糖がいったん下がってからその後上がってくる、というパターンが多い場合も胃運動が低下している可能性が高いです。
もしくは、食事の内容が脂質やタンパク質に偏っている場合も似た血糖パターンになりますね。
PRONT試験とPRONT-Pump試験

インスリン注射療法で治療中の1型糖尿病患者さんに対して、ヒューマログ(既存の超速効型インスリン)とルムジェブの効果と安全性を比較したのがPRONT-1、
インスリン注射療法で治療中の2型糖尿病患者さんに対して、ヒューマログとルムジェブの効果と安全性を比較したのがPRONT-2です。
PRONTシリーズはまだあるんでしょ。


PRONTシリーズにはまだ続きがあり、
インスリンポンプの患者さんを対象として、ヒューマログとルムジェブの効果と安全性を比較したPRONTO-Pump試験と、PRONTO-Pump-2試験があるのです。
この研究では、ルムジェブがヒューマログよりも食後血糖の上昇を抑えて、低血糖も減らしたという結果でした。
しかし、刺入部の痛みや皮膚トラブル(発赤など)はルムジェブ群のほうがやや多かったそうです。
このため、ルムジェブ群ではポンプ交換までの日数が短い結果でした。
ポンプ閉塞の頻度については差はなかったとのことですが、皮膚トラブルによりインスリンが入りにくくなる場合があるのかもしれません。
変更時に注意すべきことは血糖変化と皮膚トラブル!
今までの臨床経験および報告されているデータから言えることは…
①ルムジェブに変更後は食後すぐの低血糖に注意!
②刺入部の痛みや発赤に注意!
皮膚トラブルはそれほど多い印象はありませんが痛みを訴える方は比較的多いです。(全く痛くないという人もいますが…)
皮膚トラブルがあった人では、なんとなくインスリンが入りにくくなる、注入遮断アラートが増える場合が時にあります。注意は必要です。
変更時のトラブル対策
この対策としてできることは…
◆心配な場合は、とりあえずボーラスモードを「急速」から「ノーマル」に戻しておくこと。
痛みや食後すぐの低血糖リスクは減少します。
問題なさそうなことを確認してから、必要に応じて「急速」に戻せばよいと思います。
◆薬剤変更後しばらくは、まめに血糖を観察すること。
変更した患者さんのうち、ほぼ全員がおっしゃることですが、インスリン投与後の血糖変化が今までの感覚とかなり違ってきます。
このため、新しいインスリンの扱いに慣れるのにしばらくかかります。
特に変更後2~3ヶ月は新しいインスリンの効き方の感覚をつかむために血糖変化に気を付けておきましょう!

