糖尿病は、適切な治療を行わないと様々な合併症が進行してしまう病気です。
糖尿病合併症のなかに心筋梗塞や脳梗塞などの心血管病がありますが、これらの病気が起こりやすい患者さんの特徴はあるのでしょうか?
確実にわかっていることとして、糖尿病に加えて高血圧や脂質異常症がある、喫煙者、慢性腎臓病がある人などでは心血管病を起こしやすいことがわかっています。
下の報告をご覧ください。
これは中国のKailuanグループという炭鉱会社の従業員と退職者を対象としたコホート研究です。
糖尿病や心血管疾患(狭心症や心筋梗塞、脳梗塞など)の既往がない101,080人が研究に登録され、平均5.6年間追跡されました。
その間に、糖尿病を発症する人や心血管疾患を起こしてしまう人、またなんらかの原因により亡くなってしまう人が出てくるわけですが、糖尿病発症の有無、発症年齢と、死亡や心血管疾患発症とのあいだに関係があるのか調べられました。
とりあえず赤枠から見ていくと…
一番上は4.79って書いてある。
赤枠で囲った数字は、45才未満で2型糖尿病を発症した人が、死亡、心血管疾患を発症する、脳梗塞を発症する相対危険度(ハザード比)をあらわしたものです。
たとえば、45歳未満で2型糖尿病を発症した人が、なんらかの原因で死亡する危険度は、全集団と比較して4.79倍ということになります。
しかし、この研究において発症後の血糖コントロール状況は検討されていません。
比較的若い年齢で発症した2型糖尿病患者さんが、高齢で発症した人に比べて命やQOLに大きく関わる病気を発症する危険性が高くなるという報告は、このほかにもいくつかあります。
若く発症すれば高血糖にさらされる期間が長いから、ということが理由の一つでしょう。
このリスクを下げる方法は、(低血糖を最小限にしつつ)血糖を良好に保つことに尽きます。
逆に言えば、血糖を良好に保っていれば発症年齢と予後はほぼ関係しないと考えられます。
(さらに、最近ではこれらの心血管病を起こりにくくする(と考えられている)糖尿病薬も使用できるようになっていますので、治療薬の見直しが有効な場合もあります。)