血液検査でインスリン分泌量を知ることができる。
インスリンはすい臓から分泌される血糖を下げるホルモンですが、「どれだけインスリンを出せるか?」=「インスリン分泌能」はひとりひとり異なります。
1回の血液検査でインスリン分泌能を調べる場合は、インスリン(IRI)よりもCペプチドが優れている。
血液検査で測る項目については2種類あり、インスリン(IRI)か、Cペプチド値のどちらかで測定します。
どちらで測定したほうが良いかは目的により違うのですが、一般の血液検査で測定するのであればCペプチドがお勧めです。
もちろんインスリン(IRI)でもインスリン分泌能を評価できるのですが、2つほど問題があります。
ひとつめの問題点は、インスリン製剤との反応性です。
すなわち、インスリン治療中の患者さんのインスリン(IRI)値は、自身のすい臓から分泌されているインスリンと注射しているインスリンを足した値になってしまいます。
自分のすい臓から分泌しているインスリン量だけを測ることができないということですね。
(さらに細かい話をすると、インスリン抗体がある患者さんでは抗体にインスリンがくっつくので、正確に評価できなくなります)
2つ目の問題点は、半減期の短さです。
インスリンは肝臓などで使われ、すぐに代謝されてしまうので半減期が4-5分とかなり短いのです。(Cペプチドは12分くらい)
採血するタイミング(食事からの時間など)によって、値にかなりばらつきがでてしまう可能性があります。
逆に、糖負荷試験などで30分ごとにデータをとる場合など、短い時間内におけるインスリン値の変化などを見るときには、刻々と変わるインスリン値(IRI)のデータが有用となります。
そもそもCペプチドってなんなの?
膵臓のβ細胞で、インスリンのもとであるプロインスリンが作られるのですが、プロインスリンは分泌される直前に、酵素によってインスリンとCペプチドにそれぞれ1分子ずつ生成され、両方とも分泌されます。
この2つはセットで分泌されるので、血中のCペプチド濃度(Cペプチド分泌量)を測定すると、膵臓からのインスリン分泌量が予測できるのです。
ちなみに、空腹時の血中Cペプチドが0.5ng/mL以下だと「インスリンがほとんど分泌されていない(枯渇)状態」であり、1.0mg/mL以下は「分泌が低下している状態」と言えます。
Cペプチドのピークは食後2時間くらいですが、食後Cペプチドが1.0ng/mL以下だと「インスリンがほとんど分泌されていない状態」と言えます。
インスリン分泌量が低下していなくても糖尿病を発症する
インスリン分泌量が多くても、分泌されたインスリンの効きが悪ければ血糖を下げることができず糖尿病を発症します。
したがって、血中Cペプチドが10ng/mL!というほどインスリン分泌量が多い人であっても、その分泌量で血糖値が下がらなければ、血糖値が下がるまで、すい臓はその2倍でも3倍でもインスリンを分泌して血糖値を下げようとします。
しかし、その人のすい臓がインスリンを分泌する力の限界まできたところで、血糖値が上がり始めて糖尿病を発症するのです。
したがって、「インスリン分泌が低下していない」糖尿病の患者さんは一定数存在します。
低下していないけれどもインスリンの効きが悪い場合、それ以上分泌する余力を持っていなければ、その時点で発症してしまうのです。