糖質インスリン比のおさらい
糖質インスリン比とは、超速効型インスリン1単位が処理できる糖質量(g)のことですね。
1型糖尿病の患者さんでは、カーボカウントにより投与するインスリン量を決めている人が多いと思います。
その時に必要となるのが、糖質インスリン比ですね。
Mossanの言うとおり、簡単に言うと、1単位で何グラムの炭水化物を食べられるか、ということです。
この数値は、患者さんによって異なるのですが、一般的には10前後の人が多いと思います。
ただし、体重が多めの人では、インスリンの効きが悪くなるので、もう少し小さい値になりますし、逆にやせ型や小柄な人では、もう少し大きい値になります。
また、内因性インスリン(膵臓から分泌されるインスリン)がまだ残っている場合も、グラムインスリン比は大きい値になります。
日本人では、だいたい6~15くらいの人が多いと思います。
しかしこの割り算、結構面倒ですよね。
インスリンポンプユーザーであればポンプが計算してくれますが、ペン型インスリンユーザーだと(e-SMBGなどのアプリを使うか)手計算しないといけません…
糖質インスリンの決め方は?
まずは、その人の糖質インスリン比を決めることから始まります。
とりあえず、標準体型の方であれば10で、肥満の人は6~8、小柄な人では15~20程度で始めることも多いですが、本来は注射した超速効型インスリン量と摂取した炭水化物量から算出します。
朝食前に血糖100mg/dL→朝食としておにぎり1個(炭水化物40g)を食べて5単位注射→昼食前血糖100mg/dLであれば、40÷5=8であり、朝食時のグラムインスリン比は8ですね。
ただし、朝食前血糖が100mg/dLで朝食をとって、昼食前血糖が150mg/dLまで上がってしまったときの、炭水化物量とインスリン量でグラムインスリン比を算出してはいけません。あくまで、食前血糖が同じくらいで、良好な時のデータより算出してください。
この計算を何食分か繰り返し、その平均値を糖質インスリン比とします。
頑張って糖質インスリン比を決定しても、色々な状況や体の調子によって、この値はいとも簡単に変化するのです。
他の注意点も含めて、以下にまとめてみました。
糖質インスリン比は、朝昼夕で異なる。
一般に朝食時のボーラスインスリンは効きにくく、朝の糖質インスリン比は昼夕よりも小さい値になることがほとんどです。
1型糖尿病の患者さんでは、糖質インスリン比の朝:昼:夕の比率は、3(~3.5):5:4(~4.5)くらいのことが多いですね。
例えば、
Aさんの糖質インスリン比 朝6 昼10 夕8
Bさんの糖質インスリン比 朝12 昼20 夕16 といった具合です。
※ただし、午前中によく動く人などでは、この法則はあてはまりません。よく動くとインスリンの効きが良くなるので、朝の糖質インスリン比が高くなります。
例えば、朝12,昼10,夕8、なんていう人もそれなりにいます。
1食抜いた後の糖質インスリン比には注意
1食抜いた後、次の食事時に打つインスリン量には注意が必要です。
1食抜くと、次の食後に血糖値が爆上がりするのを経験したことはないでしょうか?
これは1食抜くことにより、次のタイミングに投与する超速効型インスリンの効きが悪くなるためであり、いつもの1.2~1.5倍以上のインスリンが必要になることが多いです。
すなわち、糖質インスリン比を下げるべきということになりますね。
月経周期によって糖質インスリン比が変わる。
月経前2週間(高温期)前後はインスリンの効きが悪くなるため、基礎インスリンだけでなく、糖質インスリン比も変わります。
高温期のボーラスインスリン(食事の時のインスリン)は低温期の1.2~1.4倍くらいまで必要量が増えますので、「そろそろ血糖値が上がってきたな」と思ったら、いつもの90%~70%くらいまで糖質インスリン比を下げる必要が出てきます。
もちろん基礎インスリンも増量が必要です。
同じ人でも、太るとグラムインスリン比は下がる
それぞれの患者さんにより糖質インスリン比は異なるとお話ししましたが、同じ人でもインスリンの感受性の変化により糖質インスリン比が変わることは頻繁にあります。
最もよくあるのは、体重が増えた時です。
体重が増えるとインスリンの効きが悪くなるので、糖質インスリン比は下がります。
SGLT2阻害薬やメトホルミンを併用すると、糖質インスリン比が上がることが多い
糖尿病薬を併用した場合には、インスリンの効きがよくなって糖質インスリン比が上がる場合があります。
おくすりを開始してしばらくは注意が必要ですね。