「糖尿病薬に限らず、なんとなく薬って体に悪い気がする。」と思うことはありますか?
① 糖尿病薬を使っていない、HbA1c6.5%の患者さん
② 糖尿病薬を使っている、 HbA1c6.5%の患者さん
③ 糖尿病薬を使っていない、HbA1c7.0%の患者さん
④ 糖尿病薬を使っている、 HbA1c7.0%の患者さん
患者さんに、どれが最も体によさそう(元気に長生きできる)、もしくは望ましい状態かと聞くと、
①がベスト!という意見がほぼ全員、次によいのは、②と③で意見が分かれます。
③を選択する人は、「血糖値がちょっとだけ高め、という程度なら薬を飲んでいないほうが体によさそう」という理由からのようです。
私の意見は違います。
たしかに、使える糖尿病薬が限られていた時代(10~20年前)であれば、患者さんの予後が良好(=元気で長生きできる)な順に、
①→②→③→④(使用する薬剤によっては、①→③→②→④)でした。
この結果は、糖尿病患者さんを長い期間追跡した、極めてたくさんの研究から明らかになっていることです。
では、一昔前とは比較にならないほど、多くの種類の糖尿病薬が使用できるようになっている現代において、
患者さんに最適で最新の治療を行った場合、最も患者さんの予後が最も良いのはどれでしょうか?
ただし…
現在、使用できる糖尿病薬のうち何種類かの薬剤は、単に血糖値を下げる作用を持つだけではなく、糖尿病患者さんの血管や腎臓を守る(心筋梗塞や心不全、腎不全になる確率を下げる)作用も持っているのです!
もっと言えば、最新の治療の考え方では、血糖値をこれ以上下げる必要がなくても、体の臓器を守るために糖尿病薬を使用する時代になっています。
(いくつかの糖尿病薬は、低血糖になるまで血糖値を下げない特徴を持っているからこそ、「これ以上下げる必要がなくても」、安全に使用できるという背景があります)
ある糖尿病薬を使用した糖尿病患者さんと、使用していない患者さんを比較した研究では、治療開始後、たった数年で、薬剤を使用していない患者さんの心筋梗塞、心不全や腎不全の発症が、使用している患者さんよりも多くなったのです。
(薬剤を使用している人と、使用していない人のHbA1c値に差がなくても、上と同じ結果になりました。)
「糖尿病薬」は「血糖値を下げる薬」であると今までは考えられていたと思います。
しかし、現在の「糖尿病薬」は、患者さんによっては「血糖値を下げる薬」というよりも「血管を守る薬」であったり、「腎臓を守る薬」であったり、「心臓を守る薬」であったりするのだと思います。
それぞれの患者さんに合った薬剤を選択することが大切ですね。